売上の期ズレとは?税務調査で売上計上漏れを指摘されないために期ズレを発生させないポイント

目次

質問

税務調査で指摘を受けやすいポイントとして、売上の期ズレがあると聞きました。期ズレとは何ですか?
また、どのような場面で期ズレが起こってしまうのでしょうか?

回答

売上の期ズレとは、当期の売上を翌期の売上としたり、反対に翌期の売上を当期に計上してしまったりすることを言います。

売上の計上時期はルールで決まっています。
そのルールを知らないために、誤って期ズレが起こってしまうというケースが多くあります。

税務調査でも、期ズレは注目されやすいポイントです。
その他に「売上の隠ぺい」「経費の水増し」「給与・賞与」等の指摘を受けやすいポイントがあります。

しかし、これらは意図して起こるケースがほとんどで、「期ズレ」は悪意が無くても起こってしまう可能性がありますので、期ズレを起こさないための理解が必要です。

この記事では、売上の期ズレについて、そもそも期ズレとは何?というところから、期ズレが起きやすい場面などについても分かりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。

期ズレとは何か?

そもそも「期ズレ(期ずれ)」とはなんでしょうか?
期ズレとは、会計上計上すべき取引の時期と実際に行った取引時期が一致しない状態を指します。

例えば、売上の面で見ると、当期中に販売して物をお客様に引き渡しているのに、請求書を発行していないことや売上代金を回収できていないことで、今期の売上にしなかったというような場合です。

請求時期やお金の回収状況によって、売上計上時期は影響を受けることはありません。
なぜなら、売上(収益)の計上時期は法律のルールによって決まっているためです。

収益の計上時期の原則は、目的物の引き渡しの日又は役務の提供の日に収益計上することとされています。
そのため、物の販売の日(引き渡しの日)に売上計上が必要なのです。

それでは、具体的な収益の計上時期の考え方について整理していきます。

発生主義と実現主義

売上や費用は、発生主義によって計上する必要があります。
発生主義とは、実際のお金の動きは関係なく、その取引が行われて対価が生じた(発生した)タイミングで、売上や費用を認識する方法のことをいいます。

例えば、A商品を8/31にお客様に販売しました。A商品の代金1,000円は翌日までに振込みで支払う約束になっています。その後、約束どおりお客様は9/1に代金1,000円を指定の口座へ振込みました。

このA商品の売上計上時期は、販売した8月でしょうか?代金を受け取った9月でしょうか?
発生主義に基づくと、8月が正解です。
発生主義では、代金を受け取ったかどうかに関係なく、対価が発生したタイミングで計上する必要があります。

また収益の認識で用いられる考え方で実現主義というものがあります。
発生主義のみを採用した場合、その売上が確実に生じるかどうか不透明であったり、売上の金額が確定しなかったりということが考えられます。
そのため、まだ売上の事実がなく実現していないもの(未実現収益)は売上として計上してはいけません。
逆に実現していない売上を計上してしまうと、粉飾決算になってしまいますので注意しましょう。

期ズレが税務調査で指摘されやすい理由

もし期ズレが発生すると、会計上はどのような影響があるのでしょうか?

例えば、今期の売上を来期に計上してしまうと、今期の利益が少なくなるため、その事業年度の法人税や消費税も少なくなります。

これでは税金計算がうまく行えないため、税務署の調査官は特に期ズレを注視します。
具体的なポイントは次のような点です。

税務調査で見るポイント
  • 今期の売上計上が漏れていないか(翌期に回されていないか)
  • 請求日以後の売上計上が漏れていないか?
  • 翌期の売上を当期に繰り上げていないか?
  • 決算時点の売上のみ計上基準が変わっていないか?
  • 売上を前受金や仮受金として処理していないか?

期ズレは経理ミスによって起こりやすく、意図的にも起こしやすい部分であるため、調査官は、会計帳簿と実際の取引記録の整合性を確認します。

もし売上の計上漏れを指摘された場合には、過少申告加算税や重加算税(悪質なケース)というペナルティが課させる恐れがありますので、期ズレには十分に注意しましょう。

売上の期ズレが発生しやすいケース

実際に期ズレが発生しやすい具体的な事例は次のようなものがあります。

売上の期ズレが起こりやすい事例
  • 翌期に請求書を発行した
  • 締め日後の取引を翌期に計上した
  • 翌期に納品した商品の代金を事前に受け取った

それぞれのケースを見てみましょう。

翌期に請求書を発行した

8月決算のコンサルティング会社を例にして考えてみます。
8月決算の会社の場合、8月分の売上までは当期の売上として計上する必要があります。

この会社では、コンサルティングを行い、翌月末までにお客様からコンサルティング料金を振込みしてもらっています。
本来は月末にコンサルティング料の請求書をお客様に渡すのですが、8月は請求書の発行を忘れてしまい、9/15に発行しました。

8月分の請求書を9/15に渡しているため、請求したタイミングである9/15に売上を計上してしまいがちですが、「8月分」の対価であるため、8/31までに売上が確定しています。
売上の確定時期と請求書の発行時期は関係ありません。
9/15に売上を計上すると、期ズレが発生してしまいますので注意しましょう。

締め日後の取引を翌期に計上した

締め日後に行われた取引が前の会計期間に計上されないケースがあります。
売上の集計を月末締めで行っている場合には起こりにくいのですが、会社によっては月の途中を締めにしている会社も多くいらっしゃいます。
これにより、実際の取引時期と計上時期がずれることがあり、期ズレが生じます。

先ほどの8月決算のコンサルティング会社で考えてみます。
この会社では、売上を毎月20日締めで計上しています。
そのため、8月分の売上は7/21~8/20で計上し、8/21~9/20分は翌期の9月に計上しました。

期中の集計では問題ないのですが、決算時点では期ズレが生じてしまっています。
8/21~8/31の取引は会計期間上は当期に該当するため、8/21~8/31分も当期の売上としなければいけません。

このように月の途中を締めにしている会社の税務調査では必ず確認されます。
売上を翌期分にしてしまうと、期ズレとして売上計上漏れになってしまいますの気をつけてください。

翌期に納品した商品の代金を事前に受け取った

また8月決算のコンサルティング会社で考えてみます。

毎月のコンサルティング料金について、お客様から複数月分をまとめて受け取る場合は期ズレが発生する可能性があります。
例えば、8月~1月分までの6ヶ月分を受け取ったとします。
コンサルティングの場合、コンサルティングを実際に行って始めて対価が発生します。
そのため、9月~1月までの分は当期中には行われていないため当期の売上ではなく、実際に行われる翌期の売上になります。

このように来期に納品される商品の前払いを当期に計上するケースも期ズレを引き起こす原因となります。

まとめ

売上計上の考え方を理解していないと、期ズレは非常に起こりやすいです。
起こりやすいが故に、税務調査では注視されます。
意図せず、期ズレで売上の計上が漏れてしまって指摘されないように注意しましょう。

また請求タイミングを意図的にずらすことで、売上の計上時期を遅らせようと思われる方もいるかもしれません。
税務調査では取引相手にも確認がいって迷惑をかけてしまう恐れがあり、また指摘を受けると重加算税という重いペナルティを受ける場合がありますので、適切な処理を心がけるようにしてください。

もし、売上の計上時期に迷ったり、過去の売上計上ミスの修正申告を検討されたりしている場合は、お気軽にご相談ください。

 

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