法人経営者が家族に給与を支払う場合のポイント

目次

質問

法人で会社経営をしています。家族に給料を払うことはできますか?

回答

経営者ご自身の家族に対して給与を支払うこと自体はまったく問題ありません。

法人の場合は、個人事業主のように『青色専従者』というものがないため、税務署への届出なしで家族に給与を支給することができます。
また給与を受け取る家族は、他の会社でパートで働く場合と同様に、他の所得が無ければ年間で103万円未満の給与であれば、配偶者控除を受けることができます。
そのため、法人の経営者が家族へ給与を支払うことには大きな節税効果が期待できます。

しかし、給与額や待遇などのポイントに気をつけないと、後々の税務調査などで指摘を受けるかもしれません。
そのため、この記事では、法人の経営者が家族に給与を支払う場合に気を付けるべきポイントについて解説します。

大きくは次の3つがあります。

  1. 労働の根拠を示す。
  2. 給与の金額を妥当な金額にする。
  3. 他の従業員と同様の給与・ボーナス体系にする。

それぞれについて詳細を解説します。

労働の根拠を示す

家族を従業員として採用し給料を支払う場合には、その家族が実際に従業員として労働しているかを示す必要があります。

当然ですが、実際には働いていなければ給与を支払うことはできません。
なぜなら給与は労働の対価として支払うものだからです。

もし勤務実態がない状況で給与をしていると否認される(経費として認められない)ので注意しましょう。
そのため、家族に対する給与を否認されないよう、その家族が本当に働いているということを証明できるようにしておきましょう。

労働の実態を証明する方法として、例えば次のような方法があります。

◆時間の記録
→タイムカード等で労働時間の勤怠管理を行っている会社であれば、同じように家族に対しても勤怠管理を行いましょう。


◆日報・週報の記録
→従業員が業務で行った作業について日報や週報の記録を行っている会社であれば、その家族も日報・週報を記録するようにしましょう。

◆業務分担表の作成
→家族が行う作業の内容を社内の書面で明確にしておきましょう。

このような情報が残っていれば、まず家族が実際に働いていないのでは?と疑われる可能性は限りなく小さくなります。
給与の経費性について、家族給与は優先して確認されるポイントになりますので、意識して労働実態を残すように心がけましょう。

給与額を妥当な金額にする

家族へ支払った給与の金額が、そのまま法人の経費になります。
また、扶養の範囲内であれば家族自身の所得税がかからず、もし給与の金額が扶養の範囲を多少超えても法人税よりは税率が低いため、家族への給与は節税効果が期待できます。

そのため、家族への給与をなるべく多めに支払いたいと思われる経営者も多いですが、家族への給与額の決定には注意が必要です。

給与とは、雇用契約に基づいて労働の対価として従業員に支払われるものです。
そのため、給与の金額が労働に見合っている必要があります。

その家族が行う仕事を家族以外の第三者が行う場合に、同じ給与を支払えるかということがポイントです。

例えば、第三者の場合は月15万円の業務内容なのに、家族が行う場合は月30万円だとすれば、その給与額は明らかに高すぎると言えるでしょう。

このように家族に対する給与であっても、他の従業員が受け取るであろう給与に見合ったものでなければいけません。
不相当に高額な場合には、過大と認められる部分が否認されてしまうため、給与額は慎重に検討するようにしましょう。

他の従業員と同様の給与・ボーナス体系にする

2点目の他の従業員と同じ対価にする内容に近いですが、給与の金額以外についても他の従業員と条件の差がないようにしましょう。

例えば、よくある例として次のような差が考えられます。

・支給の方法(家族には現金手渡し)
・支給日や支給回数
・ボーナスの有無や支給時期(家族だけボーナスがある)
・ボーナスの金額(家族に対するボーナスの金額が他より明らかに多い)

家族なので他の従業員よりも好条件にしてしまいがちです。
しかし、不相当に好条件の場合は否認リスクが高いため、十分に注意しましょう。

家族給与が否認された場合の影響

もし家族に対する給与が税務調査などで否認された場合には、次のような影響が考えられます。

  • 否認された部分の法人税が追加される
  • ペナルティの税金が課される(過少申告加算税、悪質の場合は重加算税など)
  • 社会的信用が損失する(金融機関、取引先など)

追加の法人税やペナルティの税額によって資金繰りが悪化や、社会的信用の失墜によって取引減少などによって、本業に影響が出てしまうかもしれません。
そのため、このようなリスクを避けるためにも、先に説明したポイントを忘れないようにしてください。


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