決算書の経営分析は現在と過去を比べることから始めよう【会計を経営に活かす方法】

会社は、決算を終えるたびに決算書を作らなければいけません。
決算書には貸借対照表や損益計算書、株主資本等計算書などがあり、事業年度ごとに会社の事業収入や支出などを計算しまとめた書類のことをいいます。

決算書について悩まれている経営者がとても多くいます。
当事務所でご相談いただくお悩みで最も多いのが「決算書を経営に活用できていない」ことです。
毎年毎年、決算書が積みあがっていくだけで経営に活かせていないと感じている方が多くいらっしゃいます。

なぜなら、決算書は単語と数字が並んでいるだけの書類で、さらに書かれている単語は勘定科目などの専門用語。
経営のために何をすべきかは何も書かれておらず、決算書を有効活用するためには、読み取って分析しなければなりません。

損益計算書の分析だけでも売上高経常利益率、総資産回転率、労働分配率・・・と難しい言葉が並んでウンザリしますよね。

そこで、経営分析の一歩目として「現在と過去の比較」から始めることをおすすめします。
現在と過去の数字の違いを把握するだけで、なぜ数字が変動しているのかという疑問や新たな発見につながります。

この記事では、現在と過去の決算書の比較から始める経営分析について、分かりやすく解説しています。
決算書を経営に有効活用したいと感じられている方にとっては有益な情報ですので、ぜひ参考にしてくださいね。

目次

決算書が読めないデメリットとは?

中小企業の経営者の中には、営業出身や職人出身で経理(簿記)の経験がないため、数字が苦手という方が多くいらっしゃいます。

当事務所に相談に来られる方の多くは、会計はすべて丸投げで税理士に任せたい、自分は経理に関わりたくない、と思われています。
調べてみると、なんと経営者の8割は決算書を読むことができないそうです。
しかし決算書が読めない場合、次のデメリットが生じる可能性があります。

決算書が読めないデメリット

  • 正しい経営判断ができない
  • 倒産するリスクが高くなる
  • 融資が不利になる

正しい経営判断ができない

決算書は会社の財務状態や経営状況を表す鏡です。
そんな重要な決算書であるのに、読むことができないと会社の財務状態・経営状況を正しく把握することができません。

新店舗出店・設備投資などの新規事業展開や既存事業の撤退といった大きな判断から、販売単価や固定費は適正かといった日々の判断まで、会社は数多くの経営判断を行います。
会社が安定した経営を続けるためには正しい経営判断が必要です。

しかし、会社の財務が分かっていない状態では誤った経営判断をしてしまうかもしれません。

倒産するリスクが高くなる

決算書が読めないと”なんとなく”の経営になって倒産するリスクを高めてしまうかもしれません。

「今月は忙しかったから売上は多いだろう」、「近々大きな支払いがあるけどたぶん大丈夫だろう」というように根拠なく曖昧な判断をしてしまいがちです。

お金の残高や売掛金の回収期間によっては、大きな売上があるけど支払いに充てるお金がない状態になってしまうかもしれません。
いわゆる黒字倒産をしてしまう可能性があります。

融資が不利になる

会社を経営する上で資金調達のために銀行に融資をお願いすることがあります。

融資を申し込む場合には、銀行に決算書を提出して審査を受けます。
その際、銀行員は決算書の内容を経営者に質問することがありますが、もし決算書が分かっていないと、銀行員に適切な回答をすることができません。

銀行員から「決算書が分からない社長」という見方をされてしまう可能性があります。
そうなると融資の審査が厳しくなったり、金利が上がったり、融資が不利になってしまうかもしれません。

決算書が読めるメリット

決算書が読んで経営に有効活用できるようになると、次のようなメリットがあります。

決算書が読めるメリット

  • スピーディーに経営判断ができる
  • 早期の問題発見と対策ができる
  • 資金調達を行いやすくなる

スピーディーに正しい経営判断ができる

決算書が読めない場合、決算書の内容を税理士から説明されるまで良し悪しが分かりません。
良し悪しが分からない状態では、経営判断が遅れたり、誤った経営判断をしてしまいます。

一方で決算書が読めると、自分で会社の財務状態・経営状況を俯瞰することができます。
第三者から指摘される前に「なぜ粗利率が下がっているのか?」「人件費は増え続けているが売上が増えていないのはなぜ?」などの発見が得られやすくなります。

そのため、いち早く疑問や気付きに対処することができ、実態に合った正しい経営判断を行うことができます。

早期の問題発見と対策ができる

決算書が読めると、会社の異変に早く気付くことができるようになります。

健康診断や人間ドックを思い浮かべてみてください。
診断結果の表には、検査項目ごとにアルファベットで結果(採点)が示されています。
もし検査項目が何のためのものか、その内容について分かっていないと、体に異常がでるまで自分が病気であることに気付けません。
一方で、検査項目の内容が分かっていると、判定が良くない場合にすぐに対処することができます。

決算書は健康診断や人間ドックの検査結果と同じです。
決算書の内容が分かると、経営が悪化する前に会社の問題点に気付き、早急に対策を打てるようになります。

資金調達を行いやすくなる

決算書が読めると、会社の財務状態が分かります。
手元にどれくらいのお金があるのかといった実態把握から、今後どれくらい資金が足りなくなるのかという資金予測を行いやすくなります。
そのため、資金調達の適切なタイミングが分かるようになります。

また決算書に強い経営者は、銀行員にも好まれやすいというメリットがあります。
低金利の融資やプロパー融資など、銀行員から有利な融資の提案が起こりやすくなります。

現在と過去の決算書を比較する

決算書から経営分析するためには、まず「現在と過去を比較する」ことから始めましょう。
現在と過去の比較には、前期と当期の2年分を比べたり、5年分を並べたり、試算表ベースで月単位で見たりする方法があります。

貸借対照表、損益計算書のそれぞれの項目を比較するだけでも、具体的に次のような分析ができます。

貸借対照表の項目を比べて分析できること

・現預金:
 前期よりお金が増えた(減った)、
 社長の実感と合っているか?
 資金調達を検討する必要はないか?

・売掛金、受取手形:
 売掛金が増えた原因は?
 回収サイトを短くする交渉は必要ないか?
 過去の売掛金が残っていないか?

・棚卸資産:
 在庫が増えた原因は?
 不良在庫が残っていないか?
 在庫の回転期間は?

・固定資産:
 何の固定資産を保有しているか?
 売却して現金化する必要はないか?

・買掛金、支払手形:
 現預金・売掛金等の流動資産より多くないか?

・借入金:
 借入金が減っているか?
 さらに資金調達できる見込みはあるか?

・純資産(自己資本):
 利益が蓄積されているか?
 自己資本比率は?

損益計算書の項目を比べて分かること

・売上高:
 売上が変動した原因は?
 目標を達成したか?
 売上目標に対する進捗率は?

・粗利益率(原価率):
 原価率が上がった(下がった)原因は?
 粗利益率の低い得意先は?
 仕入先を見直す必要はあるか?

・固定費全体:
 最も経費が多いのは何か?
 前期より大きく増減している項目はないか?

・人件費:
 給与が増えた(減った)原因は?
 売上が減って人件費が増えていないか?

・交際費:
 交際費が増えた原因は?
 節制の必要はないか?

・広告宣伝費:
 広告宣伝費が売上・利益の増加に貢献したか?

・営業利益、経常利益:
 本業の利益ベースで前期より良くなっているか?
 当期純利益が増えていても営業外収益や特別利益が要因ではないか?

上記はほんの一例で、決算書の比較から確認できるポイントはまだたくさんあります。
これらは現在と過年度の決算書や試算表を比べてみるだけで気付くことができ、5年分を並べてみるとさらに会社の傾向が見えてきます。

とてもカンタンな方法ですので、まずは現在と過去を見比べることから始めましょう。

まとめ

この記事では、現在と過去の貸借対照表と損益計算書を比べて見るだけでできるカンタンな経営分析について解説しました。

決算書から経営分析ができないとお困りの経営者の方は多くいらっしゃいます。
しかし経営分析とは、〇〇率を計算して、その結果で経営方針を決めるというような難しい方法だけではありません。

決算書の項目からだけでも分かることがたくさんあります。
まずは現在と過去を比べることから分析を始めて、決算書を経営に有効活用できるようにしましょう。

弊社の顧問契約(継続支援サポート)では、会社の財務状態・損益状況のご説明から経営・資金繰りに関する提案などを「分かりやすく」「丁寧に」お話させていただきます。

会計や経営について”知りたい!”と考えている経営者を大歓迎しています。
地域を問わず、オンライン面談で対応させていただいていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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