法人口座が開設できない原因と審査で落ちしないための準備とは?

法人を設立して事業を行う場合には、銀行など金融機関の口座を準備します。
現金やりとりだけで完結する場合もありますが、他社との取引において銀行口座がないと取引を避けられることがあります。

そのため会社で円滑に事業を行う場合には、会社(法人)用の銀行口座が必要です。

法人を設立したら事業を早く軌道に乗せるために、なるべく銀行口座は早く作りたいですよね。

しかし法人口座を作るためには、金融機関の審査基準をクリアしなければいけません。
この口座開設のための審査基準をクリアできずに、なかなか思うように口座開設できないという会社は多くあります。

この記事では、法人設立後にスムーズに法人口座を開設できるように、口座開設を断られてしまいやすい原因と審査を通過するための準備について解説します。

「〇〇があるせいで口座開設できない」のように開設できない原因が分かっているかどうかで、審査を通過できる可能性は非常に高くなります。
ぜひこの記事を最後まで読んで、参考にしてくださいね。

目次

法人口座とは?

法人口座とは、株式会社〇〇や合同会社▲▲のように会社が口座名義人である口座のことをいいます。

法人を設立して事業を営む場合、代表者個人ではなく、法人自体の口座を作ります。
なぜなら、会社は”法人”で代表者自身は”個人”というようにそれぞれ別人格(他人の関係)であるため、法人と代表者個人の資産を分ける必要があるためです。

また法人口座は法人を設立したら誰かが用意してくれるものではなく、法人(代表者)自身が口座を作りたい金融機関で法人口座の開設手続きをします。

法人口座は作りにくい?

金融機関で法人の口座を作る場合には、申し込めば誰でも作成できるというわけではありません。
金融機関の方で問題ないことを確認してはじめて口座が開設される流れとなっています。

そのため、法人口座を持つためには金融機関の審査を通過する必要があります。
しかし法人口座の開設の審査は、個人口座を開設するときよりも厳しいと言われています。

最近では少ない資本での設立や合同会社のようにスピーディーな設立ができるようになりました。
このため法人口座を詐欺事件や不法行為に使用されてしまうケースがあることから、犯罪防止の一環として金融機関では厳しい審査基準が設けられているのです。

法人口座の審査を通過するためには、会社が実在するか、犯罪の目的の会社ではないか、会社の事業実態と健全性を証明しなければいけません。

法人口座の審査で落ちてしまう原因

金融機関で法人口座を開設するためには、厳しい審査基準をクリアしなければいけません。
もし審査基準を満たしていなければ、法人口座の開設を断られてしまいます。

当事務所に相談に来られた人でも法人口座開設を断られた方はいらっしゃいます。
断られた人に共通する原因について、次のようなものがあります。

法人口座を断られる原因の例
  1. 本店がバーチャルオフィス
  2. 資本金が少ない
  3. 合同会社である
  4. 行う事業の許認可が未取得
  5. 登記の事業目的が多すぎる

それぞれ具体的に説明します。

本店がバーチャルオフィス

法人を設立する場合には、必ず本店(会社の所在地)を登録します。
もし事務所を持たない場合には、本店を自宅とすることも可能ですが登記情報より住所が公開されてしまうため、セキュリティの観点で自宅を本店にしたくない人もいます。

そのような場合にバーチャルオフィスを利用される方はとても多いです。
賃貸物件とは違って、バーチャルオフィスは手軽に事業用の住所を持つことができるため、最近では利用者も増加しています。

しかし本店がバーチャルオフィスだと、金融機関から法人口座の開設を断られてしまう可能性が高くなります。
バーチャルオフィスは手軽に住所を持てるため、設立して事業実績のない状態では、金融機関からすると会社の実態を疑われてしまうかもしれません。

バーチャルオフィスでも法人口座を開設できる金融機関はありますが、スムーズな事業開始を考えるとバーチャルオフィスは控えた方が良いでしょう。

資本金が少ない

会社法の改正によって、資本金が1円以上あれば法人を設立できるようになりました。

しかし資本金が少ない(少なすぎる)と法人口座の開設を断られる可能性が高くなります。

資本金が少ないということは、事業を開始するための資金が少ない状態です。
少ない資金で会社を作って事業を開始することは、金融機関からすると不自然に感じられるため、犯罪を疑われてしまう可能性があります。

そのため、金融機関は口座の悪用を否定できず、口座開設が厳しくなります。

法人が合同会社

合同会社であれば法人口座が作れないということではありません。
しかし株式会社の場合と比べると、合同会社の方が法人口座の開設を断られる可能性が高まります

実際、過去に設立をお手伝いさせていただいた合同会社でも、法人口座の開設に苦労されていました。

合同会社の設立では、株式会社の設立よりも少ない初期費用で、スピーディーに法人を進めることができるメリットがあります。
しかし容易に設立できるため、少ない出資で設立し、その法人をマネーロンダリングなどの犯罪に悪用されることがあります。

そのため、合同会社に対する金融機関の目線は厳しいものになります。
「合同会社=法人口座の開設ができない」というわけではありませんが、審査でマイナス要素になりやすいです。

行う事業の許認可が未取得

事業を営むために許認可(免許)が必要な事業があります。
許認可が必要な事業の場合、行政機関より許認可を受けていない法人はその事業を営むことができません。
そのため、許認可を受けていないと事業を行なうことができないため、法人口座においても事業を開始できる(許認可を取得した)状態でなければ、法人口座の開設を断られてしまいます。

許認可が必要な事業として、下記のような業種があります。

・飲食業
・美容業・理容業
・不動産業
・古物商(中古品の販売など)
・酒類の製造・販売
・人材派遣業

その他にも許認可が必要な事業は多くあります。
事業内容によって必要な許認可は違いますので、これから行う事業は許認可が必要か、事前に確認するようにしましょう。

登記の事業目的が多すぎる

法人を設立するにあたって、その法人がどのような事業を行うのかを示す事業目的を決定します。
この事業目的が多すぎると会社の実態がよく分からないため、法人口座の開設が難しくなってしまうかもしれません。

極端な例ですが、下記のように事業目的が20個以上ある場合、どのような会社かイメージをすることができるでしょうか?

不動産の買取販売、不動産の仲介、不動産の賃貸、飲食業、食品の製造、食品の卸売、経営コンサルタント業、会計コンサルタント業、財務コンサルタント業、服飾雑貨の販売、書籍の販売、音楽メディアの販売、古物商、生命保険の代理店、損害保険の代理店、スポーツジム経営、ヨガ教室の経営・・・

何を行う会社なのかよく分かりませんよね。
金融機関から法人の実態に疑念を持たれると口座開設は難しいため、事業目的は10個以内を目安にしておいた方が良いでしょう。

法人口座の開設を断られないための準備

それでは、法人口座開設の審査基準をクリアするために、どのような準備をしておくとスムーズに口座開設を行うことができるのでしょうか?

断られてしまう原因の逆説になりますが、次の準備を行うことで断られるリスクを軽減することができます。

断られないための準備
  1. 法人の本店をバーチャルオフィスにしない
  2. 資本金の金額を最低50万円以上にする
  3. 第三者から会社の実態が確認できるようにする

法人の本店をバーチャルオフィスにしない

法人の本店は、法人口座の開設において重要な審査基準です。
そのため、安易に本店をバーチャルオフィスとしないように注意しましょう。

できる限り実態のある場所を選びましょう。
具体的には、賃貸物件の中から事務所を借りたり、もしくは自宅を事務所利用したり、本当の住所のある(バーチャルでない)物件を本店登記することをおすすめします。

本店住所は公開情報のため、自宅を本店にしたくないという方もいますが、代表者の自宅住所も履歴事項全部証明書(謄本)で公開されています。
どちらにしても自宅住所が公開されていますので、本店住所も自宅で問題ありません。

それでも自宅は嫌で、かつ事務所費用を抑えたい場合には、シェアオフィスを利用することも可能です。
賃貸等よりも信用度は下がりますが、バーチャルオフィスよりは口座開設できる可能性は高くなります。

資本金の金額を100万円以上にする

なるべく少額の資金で事業を開始したい人も多いと思いますが、資本金は100万円以上の金額を用意するようにしましょう。

過去に起業を支援させていただいた会社の事例でも、資本金が50万円未満の場合には口座開設に難航する傾向があります。
もちろん資本金が50万円未満だから断られたわけではなく、資本金の少ない会社は他の要素(バーチャルオフィス、合同会社など)も重なってしまうことが多いためです。

資本金が多ければ多いほど、金融機関から見た会社の信頼度は高くなります。
スムーズな事業開始のためには、最低でも100万円以上の資本金を準備することをおすすめしています。

第三者から実態を確認できるようにする

法人口座の開設では、その法人が実在することや法人の事業活動の実態を確認できることが大切です。
法人の実態が確認できるための根拠資料として具体的に次のようなものがあります。

・ホームページ
・会社案内のパンフレット、チラシ
・他社発行の請求書、発注書
・自社発行の請求書、発注書
・固定電話の契約 など

これらの書類すべてが開設のために必要というわけではありませんが、必要資料としていずれかの資料提出を求められる可能性があります。
書類を紛失してしまわないように、確実に保管をしておきましょう。

代表者が原因の場合もある

法人口座開設時には、法人に関する書類だけでなく、代表者の本人確認書類なども準備が必要です。
法人の実態は問題なくても、代表者が原因で断られてしまうケースもあります。

例えば、運転免許証を何度も再発行していたり、住所が県外であったりと、本人確認書類で不自然な点があると、審査ではマイナスになってしまうことがあります。

まとめ

この記事では、金融機関の法人口座が作れない原因と、スムーズに開設するための準備について解説しました。

法人が事業活動を行ううえで金融機関の法人口座は必ず必要になります。
口座開設に時間がかかり事業開始につまずいてしまうと軌道に乗るのが遅くなります。

口座開設を断られるリスクをできる限り小さくし、スムーズに法人の事業を開始できるように準備しましょう。

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