「専任技術者」という呼び方は、令和6年12月で正式に変わりました。今は「営業所技術者等」が正しい名前です。とはいえ、中身は実務上ほぼ同じ。これから神奈川県で建設業許可を取る方が押さえておきたいのは、ざっくり次の2つです。
- 技術者の要件をどの3パターンで満たすか
- 実務経験10年で証明するときに守る運用ルール
なお、500万円以上の工事を請け負うなら建設業許可が必要です(建築一式工事は1,500万円以上、または木造住宅で延べ面積150㎡以上)。一人親方やひとり社長でも、本人1人で「経営管理(常勤役員等)」と「営業所技術者等」を兼ねて建設業許可を取れます。本記事ではこの2つを軸に、退職時の手続きまでまとめて整理します。
「経営管理(常勤役員等)」についてはこちらの記事で解説しています。

1. 「営業所技術者等」とは|令和6年12月に名前が変わりました
営業所技術者等は、建設業許可を持つ営業所に常勤して、契約と工事の技術面を見る人のことです。建設業法第7条第2号で定められており、建設業許可の5要件のうち重い要件の一つです。
「専任技術者」が「営業所技術者等」に変わった
令和6年12月13日に建設業法の改正が施行され、それまでの「専任技術者」が「営業所技術者等(旧:専任技術者)」になりました。申請書類や手引きの一部には今も旧称が残っています。本記事では「営業所技術者等」を基本にし、初出だけ「(旧:専任技術者)」を併記します。
一人親方・ひとり社長は1人で兼任できます
一人親方(個人事業主・自分1人)や、ひとり社長(代表取締役1人だけの法人)の場合、本人が「経営管理(常勤役員等)」と「営業所技術者等」の両方を1人で兼ねて建設業許可を取れます。
神奈川県の手引き 第1章 には「要件を備えている場合は、同一営業所内に限り、常勤役員等と営業所技術者等を兼ねることができます」(神奈川県の手引きより)と書かれています。
ただし注意点が1つ。他社の常勤役員、他社の代表取締役、他社の営業所技術者、他で個人事業主として営んでいる人は、経管にも営業所技術者にもなれません。当該の会社(または個人事業)1本に専念していることが前提です。
なお、本記事は 神奈川県知事許可・一般建設業・1業種 を取る場面を軸に書いています。特定建設業の監理技術者要件、大臣許可、現場兼務の特例(請負金額の上限などを満たした場合の現場と営業所の兼務)は扱いません。
2. 技術者要件を満たす3つの選択肢
要件を満たす方法は、次の3パターンのうちどれか1つです。
| 選択肢 | 要件 | 主な必要書類 |
|---|---|---|
| ①国家資格 | 業種ごとに決まった国家資格を持っている | 資格者証または合格証明書の写し |
| ②指定学科+実務経験 | 指定学科を卒業し、所定の年数の実務経験がある | 卒業証明書+実務経験の証明書類 |
| ③実務経験10年 | その業種の実務経験が10年以上ある | 10年分の実務経験の証明書類 |
①国家資格を持っているとき
業種ごとに、技術者として認められる国家資格が建設業法施行規則で定められています。
主な資格でカバーできる業種を例として挙げると次のとおりです。(他にも多々あります)
- 1級建築施工管理技士:建築一式・大工・内装仕上げなど、建築系の幅広い業種
- 1級土木施工管理技士:土木一式・とび土工・舗装など、土木系の幅広い業種
- 1級管工事施工管理技士:管工事業
- 1級電気工事施工管理技士:電気工事業
- 1級・2級建築士:建築一式・大工・屋根・内装仕上げなどスト
合格証や免状の写しを出せば、実務経験の年数までは証明しなくて済みます。3つのなかでは一番ラクなパターンです。資格1枚で複数業種をカバーできれば、1人の営業所技術者で複数業種の許可を同時に取得することもできます。
ただし対応業種は資格の種別・種目(建築・躯体・仕上げ・土木など)で細かく分かれており、1級建築施工管理技士でも管工事や電気工事業の営業所技術者にはなれません。自分の資格でどの業種をカバーできるかは、神奈川県の手引き 第2章第4節 の「有資格区分コード一覧表」で確認してください。
なお 2級技能士で営業所技術者になるには、資格取得後3年以上の実務経験 が別途必要です(平成15年度以前の合格者は1年以上)。1級技能士は単独で要件を満たします。
②指定学科を出ていて、実務経験もあるとき
指定学科を卒業していると、必要な実務経験の年数が短くなります。
| 卒業区分 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 指定学科の高校卒業 | 5年以上 |
| 指定学科の大学・高等専門学校(高専)卒業 | 3年以上 |
| 指定学科の専修学校卒業 | 5年以上(専門士・高度専門士なら3年以上) |
指定学科というのは、建築工事業なら建築学科、土木工事業なら土木工学科、管工事業なら機械工学科、内装仕上工事業なら建築学科などです。卒業した学科がこれに当てはまるかは、卒業証明書と建設業法施行規則の指定学科リストを照らし合わせて確認します。
③実務経験10年だけで勝負するとき
資格も指定学科卒もない場合、その業種で10年以上働いてきた実績があれば要件を満たせます。経験は通算でOKで、何社かを渡り歩いていても合算できます。
ただし、3つのなかで一番書類集めが大変です。詳しくは次の章で説明します。
電気工事業と消防施設工事業は資格が必須
この2業種だけは、実務経験パターンが使えません。「電気工事、消防施設工事においては、電気工事士法及び消防法の規定に鑑み、無資格での実務経験は原則として認められません」(神奈川県の手引きより)と明記されています。
電気工事業なら電気工事士、消防施設工事業なら消防設備士の資格が必要です。実務経験だけで取ろうとしても通らないので、最初から①国家資格パターンで進めてください。
3. 実務経験10年で証明する場合|「1年に1件以上」の契約書等が必要
実務経験10年で要件を満たす場合、神奈川県では「1年に1件以上の契約書等が必要」と定められています。
1年に1件以上、何が必要か
「1年につき1件以上の契約書等が必要です」(神奈川県の手引きより)と書かれています。
つまり、10年分の経験を主張するなら、各年について1件以上の契約書(または注文書・請求書)を用意する必要があります。「10年で1件あればいい」「直近の数年分だけで足りる」は通りません。中間の1年でも書類が一切ない年があると、その年は実務経験として認められません。年ごとに揃える前提で組み立ててください。
以下、本記事では契約書・注文書・請求書を使うパターンを「aパターン」、確定申告書を使うパターンを「bパターン」と呼びます(神奈川県の手引きが選択肢a・bとしている整理を踏襲した便宜上の呼び方です)。
aパターン:契約書・注文書・請求書で証明する
使える書類は、契約書・注文書・請求書のどれかです。年に1件以上のラインを超えていればOKで、すべての取引相手の書類を集める必要はありません。
書類の信頼度を上げるため、契約金額・工事内容・契約相手・契約日がはっきり読み取れるものを選んでください。
bパターン:個人事業主は確定申告書10年分でも可
個人事業主として実務経験を積んできた方は、確定申告書の控え10年分でも代用できます。
確定申告書のどこを見られるか
- 事業種目欄で申請業種が明確に判断できること:「○○等」のような曖昧な記載や、別業種との併記は不可です。「とび・土工工事業」と単独記載なら可、「建設業等」では不可です
- 事業種目欄が空欄のとき:個人事業主の場合は、青色申告決算書の事業概況欄や、工事注文書・工事代金請求書で事業主であることが確認できれば可。法人の場合は、添付された法人事業概況説明書の事業内容欄で代替できます
- 収受日付印または電子申告の受信通知が必須:紙コピーだけでは認められません。e-Tax で電子申告した年は、申告書本体の写しに加えて、税務署から送信された「受信通知(メール詳細)」の写しを併せて添付します
aパターンとbパターンは組み合わせ可能です。「前半5年は個人事業主期間の確定申告書、後半5年は法人勤務期間の契約書」のように整える形もよく使われます。
控えに収受印がない場合・控えを紛失している場合
紙申告で控えに収受印が押されていない場合や、過去の控えを紛失している場合は、税務署の「申告書等閲覧サービス」で過去の申告内容を閲覧して書き写すことができます。神奈川県の窓口で取扱いを個別に相談してください。
「申請のために作り直した書類」は使えません
書類は 当時のものの写し であることが原則です。「申請のために復元した書類、後日注文者が内容を証明した書類は認められません」(神奈川県の手引きより)と定められています。
申請のために作った書類、過去の取引相手にあとから証明書を書いてもらったもの、エクセルで再現した契約書などはNGです。当時の書類が残っていない年は、その年の主張をあきらめて、書類が揃っている年で10年を組み立てる方向で考えてください。
4. 営業所技術者が退職したら|2週間以内に変更届
許可を取って終わりではなく、許可期間中もずっと営業所に常勤してもらう必要があります。
退職したら2週間以内に変更届
営業所技術者等が退職や異動で営業所を離れたら、変更届出を 変更があった日から2週間以内 に出さなければなりません(建設業法第11条)。神奈川県知事許可なら、提出先は神奈川県の建設業課です。
後任が決まっているなら、新しい技術者の資格証明書類・実務経験証明書類・常勤性確認書類をまとめて、退職と同時に変更届を出すのが普通の流れです。
後任が見つからないと許可取消の対象に
後任が見つからないと、営業所技術者等を欠いた状態になり、建設業法第7条第2号の許可基準を満たさなくなります。基準を満たさなくなった許可業者は 許可取消の対象 で、許可が取り消されると 5年間は新しい建設業許可を取れません。
技術者の確保が間に合わないからといって、実体のない名義だけの技術者を据える「名義貸し」は厳禁です。書類整備の細かいミスでただちに罰せられるわけではありませんが、悪意ある名義貸しや実務経験書類の作り直しによる許可取得は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となります(建設業法第47条)。技術者の確保が難しい場合は、廃業届を出すか、許可業種を絞り込むなど、適法な選択肢を選んでください。
まとめ
ここまでの要点を4つに絞ると次のとおりです。
- 営業所技術者等(旧:専任技術者)の要件は、国家資格 / 指定学科+実務経験 / 実務経験10年 の3パターン。一人親方・ひとり社長なら本人1人で経営管理と営業所技術者を兼任できます
- 電気工事業と消防施設工事業だけは、無資格の実務経験では取れません
- 実務経験10年パターンは、神奈川県では 「1年に1件以上の契約書等」 が必要。書類の作り直し・あとから証明はNG
- 退職したら2週間以内に変更届。後任不在は許可取消・5年間の再申請禁止につながります
香西税理士・行政書士事務所では建設業許可の取得をサポートしています。お気軽にご相談ください。

