建設業許可の取り方を解説|一般建設業・神奈川県知事許可

「500万円以上の工事を任せたい」と取引先から打診された一人親方。「法人化と建設業許可をセットで」と元請から求められた事業者。無許可で続けてきて、今後どうするか迷っている方。

きっかけは違っても、建設業許可の取得を検討するときに最初に押さえておきたいのは、**「どんな工事に許可が必要か」「どんな要件をクリアする必要があるか」「取った後に何をするか」**の3点です。

本記事は、神奈川県知事の一般建設業許可(新規取得)について、この3点を順に解説します。神奈川県の手引き(令和8年度版)の内容に沿ってお伝えします。

なお、「個人事業のまま取るか、法人化してから取るか」というご質問もよくいただきますが、税務面の検討も必要なテーマのため、別記事で詳しく扱っています。

個人事業主と法人、建設業許可はどちらで取るべきか


目次

1. 自分に建設業許可は必要?500万円ルールとは

建設業許可が必要かどうかは、1件あたりの請負金額で決まります。

請負金額が500万円未満の小規模工事は、「軽微な建設工事」として、許可がなくても請け負えます。500万円のラインを超える工事を継続的に受けるなら、許可は必要です。なお、建築一式工事については、1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅が「軽微な建設工事」とされる別の基準があります。

判定で迷いやすいのは、「消費税は含めるのか」「注文者から材料を支給される場合の扱い」「契約を分けたらどう判定するか」といった点です。これらは別記事で詳しく解説しています。

許可なしで500万円超の工事を請け負うと、刑事罰のリスクのほかに、取引先からの信用を失うリスクがあります。元請やゼネコンが「許可業者であること」を取引条件に据えるケースは年々増えていて、無許可と判明した段階で発注を止められた事業者は少なくありません。

ラインを超える受注の見込みがあるなら、早めに準備を始めるのが安全です。

500万円ルールの判定で迷う場面まとめ

建設業許可29業種の選び方


2. 建設業許可の5つの要件とは?

建設業許可を取得するには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

常勤役員等(経営業務の管理責任者等)
営業所技術者等
財産的基礎
誠実性・欠格要件
社会保険加入

それぞれの要件で何を問われているのか、順に整理します。

常勤役員等:経営の経験を問われる

常勤役員等」とは、建設業の経営を一定期間きちんと回してきた経験のある常勤役員(個人事業の場合は事業主・支配人)を指します。かつては「経営業務管理責任者(略称:経管)」と呼ばれていた要件で、令和2年(2020年)10月の建設業法改正で名称と区分が整理されました。

建設業は工事の請負・代金回収・人の采配など、業界特有の経営判断が伴うため、経験者の関与が求められます。

実務で詰まりやすいのは要件そのものではなく、過去の経歴をどう書類で証明するかです。雇用契約書や取締役の登記、工事の契約書などを揃えて、経験を客観的に示す必要があります。

なお、他の建設業許可業者で常勤役員等として配置されている方は、自社で重ねて常勤役員等になることはできません。営業所に常勤できる距離に居住していることも求められます。

営業所技術者等:技術面の知見を問われる

営業所技術者等」とは、申請する業種の工事を技術面で取り仕切れる、営業所常勤の技術者です。かつては「専任技術者(略称:専技)」と呼ばれていた要件で、令和2年改正で名称が変わりました。

判定ルートは2つあります。国家資格で証明する道と、実務経験で証明する道です。資格を持っていなくても、過去の工事実績を契約書や請求書で積み上げて、実務経験ルートで突破できる場合があります。

常勤役員等と同様、他社で営業所技術者等として配置されている方は、自社で重ねて営業所技術者等になることはできません

財産的基礎:請負契約を履行する財務体力を問われる

「請け負った工事を最後までやり切る財務体力があるか」を問う要件です。途中で資金が回らなくなれば、施主にも下請にも迷惑がかかります。入口で財務面のチェックをしておこう、という趣旨です。

判定方法は、自己資本でクリアするか、預金残高証明でクリアするかが主な選択肢になります。

誠実性・欠格要件:取引上の信頼性を問われる

「取引相手として信頼できる事業者か」を問う要件です。請負契約に対して不誠実な行為をしないか、過去に重大な法令違反がないかを確認されます。

ほとんどの方は問題なくクリアできますが、過去に拘禁刑以上の刑を受けた経歴のある方や、暴力団関係の経歴のある方は止まることがあります。気になる場合は事前に行政書士に確認してください。

社会保険加入:従業員に対する責任を問われる

「従業員を社会保険できちんと守っているか」を問う要件です。建設業は未加入事業者が多かった時代があり、業界の健全化のため、令和2年10月以降の申請から正式な要件として組み込まれました。

加入義務の範囲は、法人か個人事業か、従業員の人数によって変わります。未加入のまま申請しても許可が下りないため、申請前に必要な保険への加入手続きを済ませておく必要があります。

常勤役員等の要件と経歴証明

営業所技術者等の要件と実務経験での証明

内装工事業の営業所技術者要件

大工工事業の営業所技術者要件

管工事業の営業所技術者要件


3. 神奈川県知事許可の申請の流れ

申請に向けた作業は、おおむね次のステップで進みます。

ステップ1:申請する業種を確定する

請け負う予定の工事内容に応じて、29業種の中から申請する業種を絞り込みます。複数業種を同時に取得することも可能です。

ステップ2:ご自身が5要件を満たすかを点検する

ご自身の経歴・財務状況・事業形態に照らして、前章の5要件をクリアできるか確認します。実務上、ここに最も時間がかかります。常勤役員等・営業所技術者等の経歴証明で詰まる場合、必要な書類を集めるだけで1〜2か月かかることもあります。

ステップ3:必要書類を取り寄せる

申請様式と並行して、行政機関の証明書(登記事項証明書・身分証明書・登記されていないことの証明書など)、預金残高証明書などの金融機関の書類、自社確認資料を集めます。

ステップ4:申請書類を仕上げる

集めた書類と神奈川県の指定様式をまとめて、申請書一式として整えます。様式は神奈川県のホームページからダウンロードできます。

ステップ5:窓口に提出する

書類が揃ったら、神奈川県の建設業課(横浜市内)に提出します。提出方法は窓口での対面受付または電子申請の2通りで、郵送は受け付けていません。新規申請や実務経験の証明を含む申請は、対面受付が推奨されています。

申請窓口の所在地・受付時間・電子申請の利用方法は、別記事に整理しています。

ステップ6:審査・許可通知を待つ

提出後、神奈川県の審査を経て、許可通知書が送付されます。書類に不備があれば補正が求められ、その分だけ取得が遅れます。

自分で申請するか、行政書士に依頼するか

申請は事業者ご自身で行うこともできますし、行政書士に依頼することもできます。それぞれメリットとデメリットがあります。

自分で申請する場合

【メリット】費用を抑えられる

行政書士に依頼すれば報酬という形で外部費用が発生しますが、自分で申請する場合は法定費用以外の外部支払いが発生しません。事業を始めたばかりで運転資金を温存したい時期、社内に書類作成の時間を取れる担当者がいて本業のピーク期と申請期間が重ならない場合、過去に他の許認可申請を経験している場合には、自分で進める選択肢が現実的になります。

【デメリット】書類の取り寄せと作成、補正対応に時間と手間がかかる

申請に必要な書類は多岐にわたります。常勤役員等の経歴を裏付ける書類、営業所技術者等の資格や実務経験の証明、過去の工事の請負実績を示す注文書や請求書、納税証明書、財務諸表、預金残高証明書など、種類と件数の多さに最初は戸惑われる方が少なくありません。要件の解釈に迷う場面が出るたびに窓口で相談することにもなり、本業の合間に進めると、想定より長期化する場合があります。

行政書士に依頼する場合

【メリット】本業に集中できる

書類の作成と添付資料の収集を任せられるため、その時間を本業に充てられます。要件の解釈で迷いやすい論点や、過去の経歴の裏付け方など、申請に慎れていない方にとって判断に時間がかかる部分も、専門家であれば事案を整理しながら進められます。許可取得後にも、毎事業年度終了後の決算変更届、5年ごとの更新申請、業種追加など、手続きは継続的に発生するため、最初の段階で専門家との関係を作っておくと、その後の事務負担もまとめて軽くなります。

【デメリット】費用がかかる

行政書士への報酬という形で外部費用が発生します。費用は事務所ごとに異なり、業種数、過去の経歴の証明の難易度、追跡が必要な実績期間、書類が散逸している場合の再発行手続きの量などによって変わります。実際にどの程度の費用になるかは事業の状況によって幅がありますので、見積もり段階で作業範囲と内訳を確認した上で、依頼するかどうかを判断していくのが現実的です。

なお、建設業許可の申請書類を報酬を受けて他人のために作成・提出代行できるのは行政書士のみと定められています。事業者ご自身が自社の申請を行うこと自体は問題ありません。

神奈川県知事許可の申請窓口と電子申請


4. 取得までにかかる期間と費用は?

取得までの期間:標準処理期間はおおむね50日

神奈川県の公表する標準処理期間は、新規申請(許可換え新規・般特新規・業種追加を含む)でおおむね50日、更新申請でおおむね35日です。書類が完備していればこの期間で進みますが、補正が重なれば延びます。

書類の取り寄せや作成にも一定の時間がかかります。取引先への許可取得の約束日からは、書類差し戻しを含めて全体で2〜3か月の余裕を見ておくことをおすすめします。

申請手数料:9万円(神奈川県知事許可・新規・一般のみ)

申請時に行政へ納付する申請手数料は、神奈川県知事許可の新規申請(一般建設業のみ)で9万円です。一般と特定の両方を申請する場合は18万円、業種追加・更新はそれぞれ5万円です。

納付方法は窓口でのキャッシュレス決済(クレジットカード・QRコード決済・電子マネー)に統一されており、現金は取り扱われていません。一度納付された手数料は、許可とならなかった場合や申請者の都合で取り下げた場合でも返還されません。

法定費用以外にかかる実費

法定費用とは別に、登記事項証明書の取得手数料、預金残高証明書の発行手数料、登記されていないことの証明書の取得手数料などの実費が発生します。一つひとつは小さな金額でも、トータルでは無視できません。

行政書士に依頼する場合は、これらに加えて報酬がかかります。

神奈川県知事許可の必要書類と取得手順


5. 建設業許可を取った後にやることは?

建設業許可は、取って終わりではありません。取った後の運用が本番です

毎年の決算変更届(事業年度終了後4か月以内)

許可業者には、毎事業年度終了後4か月以内に、決算変更届を提出する義務があります。提出書類は、税理士が作る通常の決算書とは様式・科目区分が異なり、建設業法独自の様式で作り直す必要があります。

5年ごとの更新申請(有効期間満了日の3か月前〜30日前まで)

建設業許可の有効期間は5年で、満了前に更新申請を行う必要があります。受付期間は有効期間満了日の3か月前から30日前までで、30日前を過ぎると新規申請として一から取り直しになります。

変更があったときの届出

役員・営業所・常勤役員等・営業所技術者等・社会保険などに変更があった場合、事由ごとに定められた期限内に届出が必要です。常勤役員等・営業所技術者等・社会保険関係の変更は14日以内、商号・所在地・役員等の変更は30日以内が目安です。日常業務の中で見落としやすい論点ですが、漏れが積み重なると更新時に響きます。

決算変更届を溜めると更新時に手続きが滞る

「決算変更届は更新の直前にまとめて出せばいい」と考えていると、後で苦しくなります。

更新申請や業種追加・般特新規申請の前提として、前回の許可後・今回の申請までの間に、直前決算期まで決算変更届がきちんと提出されていることが求められます。複数年分溜めると更新スケジュールに大きく影響します。毎年の期限内に淡々と出していくのが、結局はいちばん安全です。

香西税理士・行政書士事務所では、税理士業務としての税務決算と、行政書士業務としての決算変更届の作成・提出を、同じ事務所内で対応しています。決算書を作る段階から建設業の届出を見据えて科目を整理できる点が、税理士・行政書士併設事務所の強みです。

建設業許可取得後の決算変更届と更新の実務


6. 建設業許可の取り方まとめ

建設業許可は、500万円のラインを超える工事を継続的に請け負うために必要な、事業運営の基盤となる許可です。許可を取るためには、常勤役員等と営業所技術者等を中心とした5つの要件を満たし、神奈川県への申請手続きを進める必要があります。要件のなかでも、過去の経歴をどう書類で証明するかが実務でいちばん時間がかかる部分です。書類の取り寄せから審査終了まで、全体で2〜3か月の余裕を見ておくと安全です。

許可は取得して終わりではなく、毎年の決算変更届と5年ごとの更新が継続的に求められます。決算変更届の提出を溜めると、更新申請の前提が揃わず手続きが遅れることがあります。毎年の期限を守って淡々と出していくのが、結局はいちばん安全な運用です。

経歴証明や業種選定で迷う場合は、ご自身で申請を進めるか、専門家に相談するかを状況に応じてご判断ください。建設業許可の申請書類を報酬を受けて他人のために作成・提出代行できるのは行政書士のみと定められているため、外部に委託する場合は行政書士事務所への相談が選択肢になります。


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