建設業許可は「500万円未満の工事なら不要」と説明されることが多く、見積金額が500万円前後になりそうなときに「自分のケースは許可が必要か」と迷う場面が出てきます。判定でつまずきやすいのは、税込か税抜か、注文者支給の材料費を含めるか、契約を分けたらどう扱われるか、建築一式工事と木造住宅の例外はどう数えるか、の4つです。本記事では神奈川県令和8年度版の手引きと建設業法・施行令の条文をもとに、この4つの場面の判定基準を整理します。
1. 軽微な建設工事(500万円ルール)の基本
一般建設業では、1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)の工事を軽微な建設工事と呼び、建設業許可がなくても請け負うことができます。500万円のラインを超える工事を継続して受注する見込みがあるなら、許可の取得が前提となります。
500万円未満という金額基準は、建設業法第3条第1項ただし書と建設業法施行令第1条の2に定められた「軽微な建設工事」の範囲です。神奈川県の建設業許可申請の手引き(令和8年度版)p1にも、500万円・1,500万円の金額はいずれも消費税込みで判定すると明記されています。税抜きで考えてしまうと、見積もり段階では軽微の範囲に収まるように見えても、契約金額では超えてしまう場面が出てきます。
建築一式工事については別の基準が定められており、税込1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅であれば軽微な建設工事として扱われます(建設業法第3条第1項ただし書、施行令第1条の2第1項)。1,500万円未満と150㎡未満はOR条件で、どちらかを満たせば軽微に該当します。
軽微な建設工事に当たるとしても、それは建設業許可が不要というだけで、建設工事として遵守すべき他の法令(労働安全衛生法・建築基準法など)が免除されるわけではありません。500万円のラインを超えるか、判定で迷う事情があるかは、契約を結ぶ前に手引きの基準と照らして確認する必要があります。
2. 迷う場面①:税込か税抜か
500万円・1,500万円の金額基準は、いずれも消費税込みで判定します。神奈川県令和8年度版の手引きp1に明記された運用で、契約上の総額が消費税込みでこの金額以上になれば、軽微な建設工事の範囲を超えることになります。
数値で確認すると、税抜450万円の工事は税込で495万円となり、500万円未満の範囲に収まるため軽微な建設工事に該当します。一方で税抜460万円の工事は税込で506万円となり、500万円のラインを超えるため軽微には該当しません。同じ「税抜400万円台」でも、税込換算で500万円を超えるかどうかで結論が変わります。
実務では見積書を税抜表記で出す業者も多いため、ボーダーライン付近の工事を受注するときは、契約締結時に税込総額で再確認することが基本です。税抜で500万円未満でも、税込にすると軽微の範囲を超える金額帯は意外と早く訪れます。
3. 迷う場面②:材料費は含めるか
注文者から材料の提供を受けて工事を行う場合、その材料の市場価格と運送賃を工事代金に加算した金額で軽微な建設工事に該当するかを判定します。建設業法施行令第1条の2第3項は、注文者が材料を提供する場合は、その市場価格(または市場価格及び運送賃)を請負代金の額に加えたものを請負代金の額とする、と定めており、注文者支給の材料は工事代金の外に置けません。工賃だけで500万円未満なら軽微という判断は、施行令の規定に照らすと正確ではないため、見積もりの段階から材料費の扱いを意識する必要があります。
自分で材料を仕入れて工事を行う場合は、材料費は当然に工事代金に含まれる前提で見積もりが組まれます。材料費を内訳から外して請負代金を圧縮することはできず、契約書上の総額で500万円未満かどうかで判定します。
「市場価格」をどう評価するかについては、施行令の条文に具体的な算定方法までは書かれていません。実務では取引価格や同等品の流通価格を参照することが一般的ですが、注文者支給の材料が特殊なものだったり、評価が分かれる場面では神奈川県の建設業課窓口に事前確認するのが安全です。事業者側だけで「この材料は安く見積もれる」と結論を出してしまうと、後から判定が覆る可能性があります。
数値で確認すると、工事代金が450万円で、注文者から市場価格50万円相当の材料の支給を受ける場合、合算すると500万円ちょうどになります。軽微な建設工事は「500万円未満」と定められているため、500万円ちょうどはこの範囲に含まれません。材料を含めた合計が500万円以上になる工事は、建設業許可が必要となります。
4. 迷う場面③:契約を分けても合算で判定される
同一の建設工事について、注文者と請負人が契約を複数に分けて締結した場合でも、原則としてそれぞれの請負代金を合算して軽微な建設工事に該当するかを判定します。建設業法施行令第1条の2第2項は「同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする」と定めており、契約書を分けたかどうかではなく工事の実態で判定する仕組みになっています。条文ただし書には「正当な理由に基く場合」の例外が置かれていますが、その判断は実態に即した個別判断となります。
「正当な理由」の具体例は神奈川県の手引きにも明記されておらず、どの場合に分割が認められるかは個別の事案で判断されます。事業者側だけで「これは正当な理由がある」と結論を出すのは安全ではありません。分割契約を検討している場合や、結果的に複数契約になりそうな工事では、契約を結ぶ前に神奈川県の建設業課窓口に事案の内容を伝えて確認するのが確実です。
実態で判定されるという点は、書面上の体裁だけでは判定が動かないことを意味します。契約書を別建てにした、注文者を分けた、工期をずらしたといった形式上の工夫があっても、工事として一体性があると評価されれば合算で判定されます。
5. 迷う場面④:建築一式工事と木造住宅の例外
建築一式工事については、500万円ルールではなく別の基準が適用されます。具体的には、税込1,500万円未満の建築一式工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅を建設する工事であれば軽微な建設工事に該当します(建設業法第3条第1項ただし書、施行令第1条の2第1項)。1,500万円未満の基準は建築一式工事すべてに適用され、住宅か非住宅かを問いません。つまり建築一式工事を税込1,500万円未満で請け負う場合は、面積要件を満たさなくても軽微の範囲に入ります。
150㎡未満の基準は木造住宅に限られた要件です。国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」第3条関係は、ここでいう木造住宅を「主要構造部が木造で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するもの」と定義しています(神奈川県令和8年度版手引きの注記も同旨です)。延べ面積の半分以上が居住用に使われていることが条件のため、店舗併用住宅などでは居住用部分の割合に注意が必要です。事務所や店舗としての用途が大きい場合は木造住宅の定義から外れ、面積要件は使えません。
1,500万円未満と150㎡未満の木造住宅はOR条件として並んでおり、どちらか一方を満たせば軽微な建設工事に該当します。例えば税込1,400万円の建築一式工事であれば、面積を問わず軽微の範囲に入ります。180㎡の木造住宅でも、税込で1,500万円未満であれば軽微です。逆に税込1,600万円の工事であれば、150㎡未満の木造住宅でない限り、軽微の範囲には収まりません。
なお、ある工事が建築一式工事に該当するか自体は実態で判断されます。建築一式工事は、原則として元請の立場で総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事を指す業種で、リフォーム工事の一部や専門工事を組み合わせた工事は別の業種に分類される場合があります。建築一式工事として申請するか、内装仕上工事や大工工事などの専門工事として申請するかで判断が分かれる事案では、神奈川県の建設業課窓口に事前に確認するのが安全です。
まとめ
建設業許可の500万円ルールで判定に迷うのは、税込か税抜か、注文者支給の材料費を含めるか、契約を分けたら合算されるか、建築一式工事と木造住宅の例外はどう数えるか、の4つの場面です。500万円・1,500万円はいずれも税込で判定し、注文者支給材料は市場価格と運送費を加算し、同一工事の分割契約は原則として合算で判定し、建築一式工事は1,500万円未満または150㎡未満の木造住宅という別基準が適用される、という4点を押さえておけば、自分のケースが軽微の範囲に収まるかをひととおり確認できます。
ただし「正当な理由」の判断や、ある工事が建築一式工事に該当するかどうかなど、手引きに具体例の明記がない論点は、事業者側だけで結論を出さずに神奈川県の建設業課窓口に事前確認するのが安全です。
香西税理士・行政書士事務所は神奈川県大船で建設業許可の新規取得・更新・決算変更届をサポートしています。判定でお迷いの方はご相談ください。

