売上急増なのに資金が不足|資金ショートの原因と乗り越えるための方法とは?

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質問

この度、長年の目標だった大型案件の受注に成功し、昨年に比べて売上が順調に増えています。
しかし売上が伸びているはずなのに、仕入代金や外注費の支払いに追われ、会社の預金通帳の残高は減る一方です。巷で耳にする「黒字倒産」という言葉が、他人事とは思えなくなってきました。

なぜ売上が伸びているのに、かえって資金繰りが苦しくなってしまうのでしょうか?
この苦しい状況を乗り越え、会社を安定的に成長させるための具体的な方法を教えてください。

回答

売上が順調に伸びていること、おめでとうございます。しかしその裏で、深刻な資金繰りの悩みを抱えていらっしゃるとのことですね。

これは事業が成長軌道に乗った多くの経営者の皆さまが直面する課題で、このような成長期こそ、これまで以上に資金管理が求められます。

この記事では、まず売上が増えるとなぜ資金繰りが悪化するのか、資金ショートを防止するための方法について解説します。

売上急増時に資金繰りが悪化する原因とは?

売上が好調にもかかわらず現金が不足する。この一見矛盾した現象の根本原因は、事業の急成長に伴う「運転資金の急増」にあります。

運転資金とは、会社が日々の事業を回していくために、常に手元に確保しておく必要がある資金のことです。この運転資金は、大まかには以下の式で計算されます。

運転資金とは?

運転資金 = 売掛金(未回収の売上) + 在庫 - 買掛金(未払いの仕入代金)

売上が急増する局面では、この式の各項目が次のように変動します。

  • 売掛金が急増
    →取引量が増えれば、その分だけ入金待ちの売上が膨らみます。
  • 在庫が急増
    →大量の受注に応えるためには、より多くの原材料や商品を仕入れておく必要があります。
  • 買掛金も増えるが・・・
    →売掛金の増加スピードに追いつかないことが多く、結果として売上入金まえに必要となる資金が増加します。

つまり、事業が成長すればするほど、より多くの運転資金が必要になるのです。
この「増えた運転資金」を、売上代金の入金より先に用意しなければならないため、会計上は黒字でも手元の現金が不足するという事態に陥るのです。

急増する運転資金を乗り越えるための対策とは?

ここでは、急増する運転資金に対する2つの対策を解説します。

1.「資金繰り表」の導入と活用

まずは、現状把握と未来予測を可能にする「資金繰り表」の導入です。
これは単なる帳簿付けではなく、経営判断の精度を高めるためにも重要な施策です。

資金繰り表導入のメリット

お金の見える化による倒産リスクの回避:

損益計算書上の利益だけを見ていては、資金ショートは防げません。資金繰り表によって数ヶ月先の現金の動きを予測することで、資金が不足するタイミングを事前に把握し、対策をする時間を確保できます。

資金繰り表導入のメリット

金融機関からの信用の獲得:

融資の審査において、金融機関は「この経営者は自社の財務状況を正確に把握しているか」を見ます。精度の高い資金繰り表を提示することは、計画的な経営を行っていることの証明となり、融資交渉を有利に進めるための有効な武器になります。

資金繰り表導入のメリット

経営判断の精度向上:

「新たな設備投資は可能か」「従業員への賞与はいくらまでなら妥当か」といった重要な経営判断を、お金の裏付けを持って行うことができます。感覚的な経営から脱却し、資金繰り表に基づく、より精度の高い決定の助けになります。

資金繰り表は、お金の流れの把握や予定に対する実績の確認にも使用できます。なぜ予測と実績にズレが生じたのか(例:想定より売掛金の回収が遅れた、急な経費が発生した等)を分析し、次の予測に反映させることで、資金管理能力を高め、経営体質を強化することに直結します。

2.成長を加速させるための資金調達

事業成長に伴う運転資金の増加を、自己資金だけで賄うことには限界があります。
適切なタイミングで外部からの適切な資金調達を行うことも、売上拡大に伴う資金ショートを防止する対策として有効です。

金融機関から融資を受ける

借入金を単なる「借金」と捉えるのではなく、事業成長を加速させるための「レバレッジ」として戦略的に活用する視点が重要です。

政府系金融機関の日本政策金融公庫は成長初期の企業や小規模事業者でも融資を受けやすいので、まずは相談すべき金融機関の筆頭です。
また銀行、信用金庫などの金融機関でも制度融資(信用保証協会付融資)などを利用できるため、会社の所在地の都道府県や市区町村で受けられる制度融資がないか確認してみましょう。

また基本的に返済不要である補助金・助成金も資金調達の有効な手段です。
例えば補助金の中には「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など、国の政策に沿って設備投資をする企業を支援する制度が多数存在します。成長している会社こそ設備投資を行う機会も多くあるため、補助金による支援を受けやすいです。

しかし補助金は、原則として後払いであるため注意が必要です。設備投資を実施して支払った後に、審査を経て採択・入金されるのが一般的です。したがって、補助金を活用する際は、入金されるまでの「つなぎ資金」をどう確保するかまで含めて計画することが必要です。

まとめ

今回は売上増加に伴う資金繰り悪化に対して、次の2つの対策を解説しました。

  • 資金繰り表の導入と活用
  • 融資や補助金等の資金調達方法の活用

売上急増に伴う資金繰りの悪化は、運転資金が増加するため起こりやすい問題です。
もしご自身の会社に合った資金繰り管理を行いたい場合や融資・補助金の資金調達のサポートを受けたい場合は、弊社で支援させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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