事業を始めるにあたって、開業に必要な設備を揃えるための資金や、直近の材料費、人件費、広告費などの運転資金が必要になります。
そこで日本政策金融公庫の創業融資制度を利用して資金を調達される人はとても多いです。
日本政策金融公庫の創業融資は、銀行(保証協会)などの他の金融機関の融資に比べて、スモールビジネスを営む個人事業者や中小企業者が利用しやすい特徴があります。
ただし日本政策金融公庫の融資であっても、融資のお金は”借りている”ものであるため、借りたあとは返済をしなければいけません。
そのため、すぐに事業が軌道に乗れば返済があっても大きな問題はないですが、軌道に乗るまでの間は返済が負担になってしまいます。
そこで、みなさんは「据置期間」という言葉を聞いたことがありますか?
据置期間を利用すると資金繰りが非常に楽になります。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資の「据置期間」を利用するメリットとデメリットについて解説します。
創業の際は資金繰りが厳しくなりがちです。
記事を読み終わる頃には、据置期間について理解を深まって、創業期の返済による資金繰り悪化を防止することができますので、ぜひ参考にしてくださいね。
据置期間とは?
金融機関から融資を受けた場合、通常であれば融資を受けた月(または受けた月の翌月)から返済を行わなければいけません。
据置期間とは、元金の返済が猶予される期間のことをいいます。
つまり据置期間を利用すると、融資の実行後すぐに返済が開始するのではなく、しばらくの間、返済開始を待ってくれる制度です。
<据置期間なし>
・12/1 融資を受ける 1,000万円(10年返済)
↓ ※すぐに返済開始
・12/25 返済開始 約85000円
<据置期間あり>
・12/1 融資を受ける 1,000万円(10年返済)
↓ ※3~12ヶ月の期間を空けることができる
・5/25 返済開始 約85000円
注意点として、据置期間は返済開始を遅らせているだけなので利息はかかります。
そのため、据置期間を設定すると、元金の返済が始まるまでは利息を毎月支払うこととなります。
据置期間のメリット
創業融資で据置期間を設定するメリットについて解説します。
据置期間のメリットは次のようなものがあります。
- 資金繰りの負担が楽になる
- 事業に専念することができる
それぞれについて詳細を説明していきます。
資金繰りの負担が楽になる
創業当初は、資金面で次のような問題が起こりやすいです。
・思った以上に最初の設備費用がかかった
・思うように売上が立たない
・人件費や広告費が予定よりも高くなった
このように創業時は最初の計画に比べて資金が必要になり、資金繰りが厳しくなってしまいがちです。
そのため、借入金の返済は資金繰りの面で大きな負担になってしまいます。
そこで据置期間を設定することで、創業期の資金繰りの負担を軽減することができます。
仮に据置期間を1年間設定することができたら、1年分の返済金を他の支払いに回すことが可能になります。
例えば、1000万円の融資を受けて10年返済だった場合、毎月の返済金は約85,000円です。
もし1年間の据置期間を設定することができれば、約102万円ものお金を他に使えるということです。
このように据置期間は、事業が安定するまでの資金繰り悪化リスクを軽減することができるため、積極的に利用した方が良いでしょう。
事業に専念できる
借入金の返済があると、どうしても頭では返済について考えてしまいます。
・返済期日までにお金を用意していなければいけない。
・来月はちゃんと支払えるか不安。
・返せなくなったらどうしよう。
このような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
創業時は売上が思うように立たず事業が安定しないため、返済への不安が生じてしまうのも無理はありません。
据置期間を活用すると、事業開始から軌道に乗るまでの数か月間の返済が必要なくなります。
そのため直近の返済について考えなくてよくなるため、目の前の事業に専念することが可能になります。
開業した後に最も大切なことは「事業を軌道に乗せる」ことです。
事業が軌道に乗って売上・利益を得られない限りは、安定した経営を行うことができずに事業存続が危ういです。
円滑に事業を軌道に乗せるためには、経営者は目の前の事業に集中することが必要です。
据置期間を活用することで、資金繰りが苦しい期間での返済に労力を費やすことがなくなるため、本業に専念しやすくなります。
据置期間のデメリット
据置期間にメリットがある一方で、据置期間を設定することによるデメリットも生じます。
- 毎月の返済金額が大きくなる
- 返済が始まる時期を忘れやすい
詳細について解説します。
毎月の返済金額が大きくなる
据置期間のありなしによって、創業融資に対する返済金総額は変わりません。
しかし据置期間を設定する場合には、返済開始後の毎月の返済額が増えてしまうというデメリットがあります。
創業融資を受ける場合には、運転資金であれば5~7年、設備資金であれば10年程度の返済期間になります。
例えば1,000万円を10年で返済することで創業融資が決まった場合、120回(12ヶ月×10年)で返済することになります。
毎月の返済額が一定だったとすると、毎月の返済元本は約84,000円(1,000万円÷120回)になります。
一方で1年間の据置期間を設定する場合には、120回の返済のうち12回(12ヶ月)は返済がないため、1,000万円を108回(120回-12回)で返済しなければいけません。
その結果、毎月の返済元本が約93,000円に増えてしまうことになります。
据置期間の間で事業が軌道に乗り、返済を考慮しても資金繰りが大きな影響ない状態であれば大きな問題はないでしょう。
しかし据置期間が終わった後も計画どおりに事業が進んでいなければ、さらなる資金繰り悪化を導いてしまう可能性があります。
融資を受けたことを忘れやすい
融資を受けてから返済開始までの期間が長いと、融資を受けたことを忘れてしまいやすい傾向にあります。
創業融資を受けた直後は手元のお金が大きく増えますが、そのお金は無償でもらったものではないので必ず返済する必要があります。
しかし返済をしていない状態が長いと、返済しなければいけないことを忘れてしまいがちです。
場合によっては、計画にないものを買ったり、不必要な豪遊をしてしまったりしてしまい、いざ返済が始まるタイミングでお金がないということになってしまうかもしれません。
昨今ではコロナ融資という制度があり、経営の状態を問わず、比較的誰でも融資を受けやすい時期がありました。
コロナ融資では返済開始までの据置期間が2~3年程度と長かったことから、”お金がたくさんあって返済がない状態”が当たり前になって、返済が始まって資金繰りが厳しくなった事業者がたくさんいます。
融資の返済があることで、手元のお金は「借りているお金」であることを認識できます。
”お金がたくさんあって返済がない状態”が当たり前になって、融資を受けているという意識が薄れると、返済が開始した後は資金繰りに苦労するかもしれません。
希望どおりの据置期間にならない場合もある
創業融資の据置期間は、希望どおりの期間にならないことはよくあります。
例えば、据え置き1年を希望していても3~6ヶ月に短縮されるというケースも見られます。
そのため資金繰り計画を立てる場合には、融資が決定して据置期間が確定するまでは、長期間の据置期間を前提とする計画は立てないようにしましょう。
まとめ
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資の「据置期間」を利用するメリットとデメリットについて解説しました。
創業期は早く事業を軌道に乗せることが最優先です。
据置期間を活用することで、資金繰りの不安が軽減されて目の前の事業に集中でき、事業安定までのスピードが上がります。
また「返済が始まるまでの期間で事業を安定させる」という目標にもなります。
日本政策金融公庫の創業融資を利用される場合には、なるべく据置期間を活用してお金のっ不安を無くしましょう。
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