減価償却費は計上しよう!減価償却費を調整して黒字化するデメリットとは?【会社経営に役立つこと】

融資を受ける前や融資を受けたあとで、金融機関から会社の決算書の提出を求められることがあります。
融資の審査や会社の経営状況をチェックするために、金融機関は決算書をもとに会社の評価を行うからです。

赤字の決算が続くと、銀行・信用金庫の評価が下がって融資に影響があるという話を聞いたことがあるかもしれません。
そのため決算書を作成するときに赤字を出さないように意識している会社が多いです。

しかし多くの会社は間違った方法で黒字化しています。
その代表例が減価償却費を計上しないで黒字決算にする方法です。

あなたの会社では減価償却費を適正に計上していますでしょうか。

  • 黒字化のために減価償却費を計上しない。
  • 毎年利益が出るように減価償却費の計上額を調整している。

黒字化のために上記のような利益対策をしていませんか?
減価償却費の金額を調整して黒字化した決算書では、銀行の評価が上がるどころか反対に悪化してしまう可能性が非常に高いです。

融資を受けるために良かれと思ってやったことが、実は悪い結果を招く方法だったなんて怖いですよね。

この記事では、減価償却費を”あえて”計上しない決算書のデメリットについて分かりやすく解説しています。
銀行・信用金庫に向けて強い決算書を作りたいと考えている経営者は必見ですので、ぜひ参考にしてくださいね。

目次

減価償却費の調整で黒字化する仕組み

まず多くの会社が行なっている減価償却費を利用して黒字決算にする方法について解説します。

減価償却費とは、固定資産の取得のために支払ったお金(取得価額)を一括で経費化せず、耐用年数に応じて各事業年度で費用配分する費用を言います。

固定資産の取得価額を各事業年度に配分する費用ではありますが、減価償却費は毎期必ず計上しなくても問題ありません。
極端な話で、限度いっぱいに償却したり、一部だけ償却したり、まったく償却しなかったりと償却額を会社が決めることができます。

例えば、減価償却費を除いた利益100万円、減価償却費の計上可能額300万円の会社の場合は通常であれば以下のようになります。

償却前の利益100万円-減価償却費300万円=200万円の損失(赤字)

一方で減価償却費を計上しない場合は次のようになります。

償却前の利益100万円-減価償却費ゼロ=100万円の利益(黒字)

このように減価償却費を計上しないことで黒字化することができます。

減価償却費を計上しなくても大丈夫?

決算において減価償却費を計上していなくても税務上問題ありません。

減価償却費には、法人税法上で計上できる限度額があります。
限度額以上の減価償却費を計上することは会計上可能ですが、限度額を超えた部分は税金計算上は経費になりません(償却超過額による損金不算入)。

一方で限度額以内であれば償却額は自由に決めることができます。
減価償却費が少ない分、利益が増えて税金が増えるため、税務署目線では限度額以内であればゼロでも問題ないのです。

なお減価償却費を計上しなくても良いのは法人の場合のみです。
個人事業主は減価償却をしなければいけませんのでご注意ください。

減価償却費を計上しないデメリット

冒頭で銀行融資の対策のため、赤字決算にしないように減価償却費で黒字化している会社が多いというお話をしました。

なぜ減価償却をしないと良くないのでしょうか?
減価償却費を計上していない決算書には、次のようなデメリットがあります。

  • ・減価償却費を計上してもしなくても銀行の見方は変わらない
  • ・粉飾決算とみられてしまう
  • ・会社の本当の損益を把握できない

減価償却費を計上してもしなくても銀行の見方は変わらない

減価償却費を調整して黒字決算にして(赤字決算にしないで)銀行・信用金庫からの融資を受けやすくすることが、多くの会社さんが考えている狙いです。

しかし減価償却費を調整して利益を出しても、銀行や信金から会社に対する見方は一切変わりません。

なぜなら、金融機関側が会社の経営成績を見る指標には、「当期純利益+減価償却費」という考え方があるからです。

減価償却費はお金の支出を伴わない経費です。
減価償却費の元となる固定資産を買う際にお金を支払いますが、実際に経費として処理されるときはお金の支払いは発生しません。

損益計算書上の減価償却費がいくら計上されていても実際のお金は減らないため、銀行は減価償却費を利益と同様に「会社に残るお金」と見ています。

「会社に残るお金」は、銀行借入金の返済の元となるお金(返済原資)です。
銀行員は決算書を見て、会社に返済原資があるかを見ています。

この返済原資は「当期純利益+減価償却費」で計算されるため、減価償却費は銀行の見方に影響がなく銀行対策のための黒字化としては無意味というわけです。

粉飾決算と見られる可能性がある

減価償却費で利益調整を行う会社は、銀行や信金から「粉飾決算を行う会社」と見られてしまうかもしれません。

貸借対照表や損益計算書等の決算書は、銀行や取引先などの利害関係者に対して、会社の正しい財務状態や経営成績を示すための資料です。
そのため減価償却費を計上せずに利益調整している決算書では、会社の正しい状態を示しているとは言えません。

減価償却費による利益調整はカンタンに分かります。

経営者の中には、法人税申告書の減価償却費に関する明細(別表16)や減価償却明細表を提示しなければ問題ないと考えられる方もいらっしゃいます。
しかし銀行から提出を求められたら対応しますし、そもそも固定資産があるのに減価償却費が計上されていないのは不自然です。
むしろ会社に対する疑念を深めてしまいますので注意しましょう。

さらに良くないことに、銀行から「赤字を隠す会社」「利益調整をして粉飾決算をする会社」というレッテルを貼られてしまうかもしれません。

一度「粉飾する会社」と見られてしまうと、間違いなく銀行から見た会社の印象が悪くなってしまいます。
すぐに借りられなくなることはありませんが、今後の条件が悪くなることが考えられます。
例えば、プロパー融資で借りれなくなったり、金利が上がったりと、融資を受けにくい状態になってしまうかもしれません。

このように減価償却費の調整で黒字化することは、銀行融資にとってマイナス要素です。
減価償却費を調整せずに、適正な決算書を作るようにしましょう。

適正な利益計画・経営計画が作成できない

減価償却費を適正に計上しないと会社の経営成績である損益が分かりません。

正しい損益が分からないと、次のように経営に悪影響があります。

  • 会社の実態把握と現状分析ができない。
  • 損益計算書の過年度との比較ができない。
  • 現状分析ができないため、正しい利益計画・経営計画を作成できない。

利益計画・経営計画は会社が生き残るために無くてはならない指針です。
十分に現状分析を行なうことができないため、利益計画・経営計画を作ったとしても実態に合っていないものになるかもしれません。

正しい経営計画を作るためにも、正しく損益計算書をつくること。
つまり正しく減価償却費を計上することが大切なのです。

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まとめ

この記事では、減価償却費を調整して黒字化することのデメリットについて解説しました。

減価償却費による利益調整は、会社内部だけでなく金融機関などの会社外に向けても良いことはありません。

もし赤字決算になっても金融機関に対し経営者が説明をすれば良いのです。
調整による黒字化で「粉飾する会社」とみられる方が、今後の取引に影響を及ぼしかねません。

適正な会社の現状分析のためにも、会社外からの信用を失わないためにも、減価償却費は正しく計上しておくことをおすすめします。

弊社の顧問契約(継続支援サポート)では、会社の財務状態・損益状況のご説明から経営・資金繰りに関する提案などを「分かりやすく」「丁寧に」お話させていただきます。

会計や経営について”知りたい!”と考えている経営者を大歓迎しています。
地域を問わず、オンライン面談で対応させていただいていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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