ご家族が亡くなって相続が発生すると、様々な相続手続きが必要になります。
故人の葬儀をはじめ、その他にも役所へ故人に関する届出の提出などがあり、相続人は落ち着く間もなく手続きを行わなければなりません。
手続きの漏れがないように進めたいものです。
しかし相続は一生のうち何度も経験している方はあまりいないと思います。
そのため、何をいつまでに手続きする必要があるのか、またそのような順序で進めていくべきなのかを理解されている人は少なく、相続手続きで漏れやミスが起こることはよくあります。
また手続きの中にも、すぐに行わなければいけないものと、落ち着いてからゆっくり行うことができるものがあり、優先順位を付けることが円滑な相続手続きのためには必要です。
そこでこの記事では、ご家族がお亡くなりになった後の相続手続きについて、特に亡くなってすぐ(数日~2週間以内)でどのようなことが必要かを整理しています。
何をする必要があるかお悩みの方や、今後起こりうる相続に向けて準備をしておきたい方はぜひ参考にしてください。
相続全体の流れ
相続の手続きというと、相続財産の相続人への分割手続きや、不動産などの相続登記、相続税の申告などが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、もっと細かく多くの手続きがあります。
またそれぞれの手続きについて、手続き期限が決まっているものもありますので、手続き漏れがないように注意が必要です。
一般的な相続手続きの流れは下記のようになります。
相続登記などの名義変更や相続税申告というのは、相続手続きの終盤の手続きで、実際にはその途中で役所や金融機関に対して行わなければいけない手続きが多々あります。
次の章では、相続が発生したら数日~2週間以内でなるべく早く行う必要がある相続手続きについて紹介します。
相続が発生して数日以内にやること
身近な人の死後、数日~2週間以内で次のような手続きを行います。
・死亡届
・火葬許可申請書
・健康保険の資格喪失手続き
・介護保険の資格喪失手続き
・世帯主の変更
・公的年金の受給停止
それぞれの手続きの詳細を確認していきましょう。
死亡届
相続が起こった場合には、亡くなった方の死亡地や本籍地、届け出る方の所在地の市役所・区役所・町村役場に「死亡届」を提出しなければいけません。
亡くなった日から7日以内(国外で亡くなった場合は3ヶ月以内)が期限です。
もし死亡届の提出義務者が、正当な理由なく期限内に提出しなかった場合には5万円以下の過料が徴収される可能性がありますので注意しましょう。
<提出時期>
死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは,その事実を知った日から3か月以内)
<提出先>
死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所,区役所又は町村役場
<必要なもの>
死亡診断書又は死体検案書・1通
<手続き対象者>
親族,同居者,家主,地主,家屋管理人,土地管理人等,後見人,保佐人,補助人,任意後見人,任意後見受任者
(引用:法務省)
基本的には親族が提出する届出書ですが、実際には葬儀屋さんが代行してくれるケースが多くなっています。そのため、葬儀屋さんに確認されることをおすすめします。
火葬許可申請書
故人の埋葬や火葬には、「火葬許可申請書」の提出が必要です。
「火葬許可申請書」を「死亡届」と一緒に市区町村役場に提出して受理されると、火葬許可証が交付されます。
<提出時期>
死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは,その事実を知った日から3か月以内)
<提出先>
死亡届を提出する市役所、区役所又は町村役場
<必要なもの>
死亡届、印鑑
一般的には、火葬許可申請書の手続きについても、死亡届と一緒に葬儀屋さんが代行してくれますので、葬儀屋さんに確認しましょう。
健康保険の資格喪失手続き
亡くなった場合には、社会保険に関する手続きも必要です。そのうちのひとつとして、健康保険の喪失手続きがあります。
なお健康保険にはいくつかの種類があるため、故人が生前にどのような健康保険に加入していたか、故人の健康保険証をまず確認するようにしましょう。
健康保険には、次のような種類があります。
・国民健康保険 ・・・ 自営業者や学生
・所属団体の健康保険(協会けんぽ 等)・・・会社員、公務員、被扶養者
・後期高齢者医療保険 ・・・75歳以上の方
この記事では、自治体が手続き先の国民健康保険、後期高齢者医療保険について紹介します。健康保険は所属団体にご確認ください。
国民健康保険
国民健康保険の加入者が死亡した場合は、「国民健康保険資格喪失届」を提出しなければなりません。
一般的な提出先や期限などは次のとおりです。
なお、自治体によっては死亡届の提出によって国民健康保険の資格喪失手続きは不要となったり、必要なものが異なったりしますので、自治体に確認することをおすすめします。
<提出先>
亡くなった方の住所地の市区町村役場
<期限>
死亡日から14日以内
<必要なもの>
・国民健康保険の保険証
・高齢受給者証
・死亡を証明するもの
・世帯主の印鑑
後期高齢者医療保険
75歳以上の方が死亡した場合は、後期高齢者医療資格喪失届の手続きが必要です。
一般的な提出先や期限などは次のとおりです。
なお、国民健康保険と同じく、自治体によっては死亡届の提出によって資格喪失手続きは不要となったり、必要なものが異なったりしますので、自治体に確認することをおすすめします。
<提出先>
亡くなった方の住所地の市区町村役場
<期限>
死亡日から14日以内
<必要なもの>
・後期高齢者医療被保険者証
・死亡を証明するもの
・世帯主の印鑑
介護保険の資格喪失手続き
65歳以上の方は原則的に介護保険の被保険者になりますので、「介護保険資格喪失届」の手続きが必要です。
一般的な提出先や期限などは次のとおりです。
<提出先>
亡くなった方の住所地の市区町村役場
<期限>
死亡日から14日以内
<必要なもの>
・介護保険被保険者証
・受給資格証明書
世帯主の変更
世帯主の方が亡くなった場合には、世帯主の変更に関する手続きが必要になります。
具体的には、「世帯主変更届」を14日以内に役所に提出しなければならず、正当な理由なく手続きを怠った場合には、5万円以下の過料が生じる可能性がありますので注意しましょう。
<提出先>
居住地の市役所・区役所・町村役場
<期限>
変更が生じた日から14日以内
<必要なもの>
・窓口に来た方の本人確認書類
・印鑑
公的年金の受給停止
国民年金や厚生年金などの公的年金は、受給者が死亡すると受給権が無くなるため、年金の需給はストップします。
年金の受給を止めるためには、「年金受給者死亡届(報告書)」を年金事務所等に提出して通知をしなければなりません。
もし手続きが遅れて亡くなった後も受給してしまった場合には、後日返還をする必要があり、もし手続きが漏れてしまうと不正受給になってしまうかもしれません。それぞれ10~14日以内に手続きが必要ですので、注意しましょう。
<提出先>
年金事務所または年金相談センター
<期限>
・国民年金・・・死亡日から14日以内
・厚生年金・・・死亡日から10日以内
<必要なもの>
・亡くなった方の年金証書
・死亡を明らかにする書類(戸籍抄本、住民票除票など)
まとめ
この記事では、相続が発生した後、なるべく早く行うべき相続手続きについて解説しました。
意外と知らない手続きもあったのではないでしょうか。
相続手続きは、相続税の申告まで考えるととても長く苦労を要しますが、手続きの中には、相続人たちで行うことができるものや、専門家に任せてしまった方が良いものなど様々です。
手続きにかかる時間や後々のリスク(例えば、税務調査の指摘リスク)などの費用対効果を見極めたうえで、相続手続きを進めていきましょう。